2013年4月9日火曜日

「文章」を分析してみよう

身の回りにあるテキストデータを分析してみます。テキストマイニングという方法です。

今回分析するのは太宰治「走れメロス」の以下の一節です。

メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此のシラクスの市にやって来た。メロスには父も、母も無い。女房も無い。十六の、内気な妹と二人暮しだ。この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿として迎える事になっていた。結婚式も間近かなのである。メロスは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。メロスには竹馬の友があった。セリヌンティウスである。今は此のシラクスの市で、石工をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちにメロスは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。のんきなメロスも、だんだん不安になって来た。路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈だが、と質問した。若い衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老爺に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。メロスは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。


単語で一番多いのは「メロス」で10回、次は「~する」で8回、次は「市」で5回となります。

これを言葉の塊(クラスター)として分析すると一番下、「メロス」基点に塊が生まれていることがわかります。


激怒したメロスを芯にして、妹や旅先などでの様々な出来ごとが層を成している様子が見てとれ、まるでバラの花びらのように描き出される情景の厚さが見えてきます。素晴らしい!

さて、プログラムによって勝手に整理分類させてみましょう。
自己組織化マップと呼ばれる方法です。


見えてきたのは、メロスの身の上話を中心に、決意、妹、友人、旅程、特性、街の描写、街での行動が繰り広げられている様子です。これは、話を理解するプロセスに近いかもしれません。

メロスは激怒し王を除くと決意した。(なぜかというと・・・)父母女房が無く、妹のため、友人のいる街へ出向き邪悪な雰囲気を感じ尋ね歩いた。・・・ というふうに地図に沿って展開すると簡単に骨子が理解できます。

「セリヌンティウス」が「竹馬の友」とか「石工」の近くに無いのは、「セリヌンティウスである。」という、文が独立していることによるもので、文章としての味わいをこの分析では理解できていないことの顕れでもあります。


分析結果は新しい視点と知識と与えてくれますが、上の図をみても分かるように、オリジナルに備わるクオリアアフォーダンスは喪失されてしまいます。人でも物でもそれを「知る」ためには、まずはオリジナルに触れることが重要です。
そして、新たなアウトプットから新たなクオリアやアフォーダンスを得る人が真のアナリストであり、実は分析とは、知を創発する、とてもアーティスティックな行為なのです。