組織において「期待以上の貢献(Organizational Citizenship Behavior: 組織市民行動、あるいはハイパフォーマンス)」を継続的に発揮するメンバーの行為選好には、いくつかの共通した特徴があります。
行為選好(Action Preference)とは、「特定の状況下で、どのような行動や意思決定を自然と優先して選びやすいか」という行動の癖や指向性を指します。
6MoN(ロクモン)などの行為選好・ナラティブ領域の概念や、組織心理学(OCB理論など)を踏まえると、期待以上の貢献をするメンバーは以下のような行為選好の組み合わせを持っています。
1. 「完了(やり切り)」×「自律的始動」の選好
期待以上の成果を出す人物は、単に「指示されたことをやる」のではなく、課題に対して当事者意識(オーナシップ)を持っています。
課題の自発的設定: 「自分の領域はここまで」と境界を引くのではなく、グレーゾーンの課題を自然と拾い上げて動き出す選好があります。
やり切る力(Grit): 計画段階で終わらせず、障害があっても着地(完了)までやりきる行動を優先します。
2. 「構造化・本質追及」×「柔軟なアジリティ(素早さ)」の選好
単なる「イエスマン」や「力づくの努力」ではなく、思考と行動のバランスが取れています。
全体最適(システム思考): 目の前の作業だけでなく、「この業務が全体にどう影響するか」「本質的な目的は何か」を捉える選好があります。
試行錯誤(プロトタイピング): 100%完璧な計画を待つよりも、まず小さく動いて(アジリティ)フィードバックを得ながら調整していく動き方を好みます。
3. 「境界超越(バウンダリー・スパン)」の選好
期待以上の貢献(OCB)の多くは、自分の役割定義(Job Description)の「外側」で発生します。
他部署・他者への関心: 自分の担当業務に閉じこもらず、隣のチームや組織全体の課題に自然と目が行く選好です。
情報やリソースの仲介(ブローカー行動): 部署間の壁を越えて知識や人材を繋ぎ、組織全体の意思決定や業務スピードを加速させます(社会学でいう「構造的空隙」を埋める動き)。
4. 「他者エンパワーメント(関与)」の選好
「自分一人で成果を出す」から「周囲を巻き込んで成果を最大化する」へ選好が向いています。
ナレッジの共有: 自分が得たノウハウや成功パターンを自分だけのものにせず、オープンに共有してチーム全体の底上げを図る行動を選びます。
対話とフィードバックの起点: 互いの価値観や状況(ナラティブ)を理解しようとし、組織内の心理的安全性を高めるコミュニケーションを自発的に行います。
5. 「学習・変化探求(学習棄却)」の選好
期待を超え続けるメンバーは、過去の成功体験に固執しません。
アンラーニング(学習棄却): 状況が変わった際、これまでのやり方を捨てて新しいアプローチを取り入れることを恐れない選好を持っています。
フィードバックの積極的受容: 自分の行動に対する周囲からのフィードバックを成長の機会として捉え、柔軟に行動修正を行います。
6MoN(ロクモン)の「対比較」は、固定的な性格を判断するものではなく、人が特定の文脈や状況において立ち上がらせる「選び方」「動き出し方」「関わり方」などの行為選好(選好の向きと強度)を映し出す「鏡」です
【6MoNにおける6つの対比較設問の前提】
- [動き出し]:じっくり考える(左) — 素早く決めて動く(右)
- [表現・感情]:感情を豊かに表現する(左) — 感情表現を控える(右)
- [関わり方]:まず皆の考えを聞く(左) — まず自分の考えを示す(右)
- [思考・推進]:どうやるのか自分で考え抜く(左) — どうやるのか皆と考え抜く(右)
- [役割の重心]:メンバーとして取り組む(左) — 調整役としてまとめる(右)
- [変化・試行]:これまでのやり方を守る(左) — 別のやり方を試みる(右)
レベル1:反応停滞(指示待ち・停滞)
- 対比較1(動き出し):
1(じっくり考える に極めて近い)- 背景: 自分で判断して動くことでの失敗や責任を恐れており、指示があるまで思考・行動を停滞・先送りさせている状態
。
- 対比較2(表現・感情):
6(感情表現を控える に極めて近い)- 背景: 自分の感情や本音を出すと摩擦が起きると感じ、自己開示を完全に遮断している
。
- 対比較3(関わり方):
1(まず皆の考えを聞く に極めて近い)- 背景: 自分の意見を持たない、あるいは提示することで評価される脅威を避けるため受け身に終始する
。
- 対比較4(思考・推進):
1(どうやるのか自分で考え抜く に極めて近い)- 背景: 他者との議論や対話の場に参加することを避け、抱え込むか放置する。
- 対比較5(役割の重心):
1(メンバーとして取り組む に極めて近い)- 背景: 主導権や責任を持つ「調整役」を完全に拒否し、最小限の受け身な役割にとどまろうとする。
- 対比較6(変化・試行):
1(これまでのやり方を守る に極めて近い)- 背景: 新しいアプローチによる変化を避け、現状維持や言われたままの前例に固執する
。
レベル2:受動実行(支援必要・指示依存)
- 対比較1(動き出し):
2(じっくり考える に近い)- 背景: 自分一人で決めて間違えることを心配し、指示や具体的な手順・お膳立てを待ってから動く。
- 対比較2(表現・感情):
5(感情表現を控える に近い)- 背景: 自分の主張や感情を出すことへの不安があり、場の空気に合わせて静観する。
- 対比較3(関わり方):
2(まず皆の考えを聞く に近い)- 背景: 周囲の様子や指示の方向性を観察し、波風を立てない答えを選択しようとする。
- 対比較4(思考・推進):
5(どうやるのか皆と考え抜く に近い)- 背景: 自力での解決策立案に自信がなく、他者に答えややり方を提示してもらうことを望む。
- 対比較5(役割の重心):
2(メンバーとして取り組む に近い)- 背景: 調整役としての負担を避け、提示されたタスクを愚直にこなす位置に身を置く。
- 対比較6(変化・試行):
2(これまでのやり方を守る に近い)- 背景: 安全性が保証されている従来の手順を好み、指示されない限り自ら新しい方法を試さない。
レベル3:公式履行(標準達成・期待通り)
- 対比較1(動き出し):
3(やや じっくり考える)- 背景: 与えられた計画や仕様、リスクをしっかり確認・分析した上で着実に動き出す。
- 対比較2(表現・感情):
4(やや 感情表現を控える)- 背景: 業務上のプロフェッショナルな節度を守り、状況に応じた客観的な姿勢を保つ。
- 対比較3(関わり方):
3(やや まず皆の考えを聞く)- 背景: チームの和やルールを重んじ、まず関係者の意見を一通り確認してから対応する。
- 対比較4(思考・推進):
3(やや 自分で考え抜く)- 背景: 自担範囲のJob Descriptionに沿って、まずは自分の力で論理的に解決策を組み立てる。
- 対比較5(役割の重心):
3(やや メンバーとして取り組む)- 背景: 自らに割り振られた責任範囲・役割(フォーマルな組織図上の役割)を過不足なく全うする。
- 対比較6(変化・試行):
3(やや これまでのやり方を守る)- 背景: 確立されたマニュアルや成功パターンを尊重し、品質や標準を安定して維持する。
レベル4:自律完遂(工夫改善・期待を超える)
- 対比較1(動き出し):
5(素早く決めて動く に近い)- 背景: 課題を見つけたら躊躇せず「まず小さく試して動いてみる(アジリティ)」選好を発揮する
。
- 対比較2(表現・感情):
2(感情表現を豊かに に近い)- 背景: 自分のモチベーションや意思をオープンにし、周囲にポジティブな影響を与えようとする
。
- 対比較3(関わり方):
5(まず自分の考えを示す に近い)- 背景: 議論のたたき台となる仮説や自分の意見を先に提示し、対話を前進させる。
- 対比較4(思考・推進):
5(どうやるのか皆と考え抜く に近い)- 背景: 一人で抱え込まず、周囲の強みや知恵を引き出しながら協働(コラボ)で解決する
。
- 対比較5(役割の重心):
5(調整役としてまとめる に近い)- 背景: 自分の作業範囲だけでなく、全体の進捗や人間関係のボトルネックを解消する役割を買って出る
。
- 対比較6(変化・試行):
5(別のやり方を試みる に近い)- 背景: 現状のプロセスに満足せず、より効率的でインパクトのある工夫や改善策を積極的に試す
。
レベル5:自律越境(本質追及・期待を大きく超える)
- 対比較1(動き出し):
6(素早く決めて動く に極めて近い)- 背景: 組織全体の目的達成のため、誰も手をつけないグレーゾーンの課題に対して即座にファーストペンギンとなって動く
。
- 対比較2(表現・感情):
1(感情表現を豊かに に極めて近い)- 背景: 人情や熱量をオープンに開示することで、他者のナラティブを引き出し心理的安全性を高める
。
- 対比較3(関わり方):
6(まず自分の考えを示す に極めて近い)- 背景: 本質的な問いや明確なビジョン・意見を最初に投げかけ、周囲の思考や議論の質を跳ね上げる
。
- 対比較4(思考・推進):
6(どうやるのか皆と考え抜く に極めて近い)- 背景: 部署や職種の壁(境界)を越えて多様なメンバーを巻き込み、創発的な解決策を生み出す
。
- 対比較5(役割の重心):
6(調整役としてまとめる に極めて近い)- 背景: 誰もが動きやすい「場(土台)」を自らデザインし、全体の推進力を最大化させる
。
- 対比較6(変化・試行):
6(別のやり方を試みる に極めて近い)- 背景: 過去の成功体験や前提(ルール)そのものを疑い、本質的な価値(目的)のために柔軟にアンラーニングして構造を変える
。
レベル6:領域創出(組織変革・期待を圧倒的に超える)
- 対比較1(動き出し):
1⇄6【局面による自在なスイッチ(3または4)】- 背景: 構想段階では深く探究・洞察(インサイト)し、局面が来れば即座に突破・決断(アクティブ)に振り替える柔軟性を持つ
。
- 対比較2(表現・感情):
1⇄6【場に応じた感情のコントロール】- 背景: 情熱をもって人を惹きつける開示と、冷静に全体の安全性を守る制御を意図的に使い分ける
。
- 対比較3(関わり方):
1⇄6【問いと傾聴の高度な循環】- 背景: 強烈なビジョンを提示しつつも、相手のストーリーを注意深く聴いて(メンタライゼーション)受け止める
。
- 対比較4(思考・推進):
1⇄6【個の洞察と集団の共創の統合】- 背景: 自らの深いインサイト(思考)を保持しながら、対話を通じてチーム全体で新しいパラダイムを創出する
。
- 対比較5(役割の重心):
1⇄6【触媒としての存在感】- 背景: 自分が主役になることも、黒衣として場を育てることも、組織の成長ストーリーに合わせて自在に変えられる
。
- 対比較6(変化・試行):
1⇄6【変革と継承のバランス】- 背景: 守るべき理念や本質(エシカル)を強固に持ちながら、時代や環境に合わせた新たな文化や仕組みを創出・定着させる
。
【まとめ:回答傾向の構造】
- レベル1〜2: 評価脅威や摩擦を避けるため、「安全な側(受け身・従来維持)」に回答が極端に偏る
。 - レベル3: フォーマルな役割・ルールを重視し、バランスの取れた安定的な数値(3〜4付近)を選択する。
- レベル4〜5: 課題解決や全体最適(目的)に向けて、「自律・即応・共創・変革」の側へ主動的にシフトした回答を選ぶ
。 - レベル6: 単一の選好に囚われず、自らの選好を客観視(鏡として認識)した上で、状況に応じて柔軟に「選び直し」ができる状態を示す
。









