サービス業を中心とした多くの企業で、アルバイトの戦力化が進んでいます。一方で、採用面接においてアルバイト経験が学生の経験としてあまり魅力的に映らないのも事実でしょう。学生から社会人への移行期(トランシジョン)にある、学業と非学業(アルバイト、サークル、レジャー、ボランティア、NPO活動など)で盛りだくさんの日常のなかでも、アルバイトが占めるウエイトは小さくありません。
そこで学生のアルバイト経験がトランシジョンにどう関係するのか考えて見ます。
戦力化が進む学生アルバイト
マーケットでの激しい競争に晒されるなかで、企業は、コストの削減と要員の確保、質の高いサービス提供という両立が困難な課題に同時に向き合っています。この解決策として、多くの企業で学生アルバイトを増やし、教育を通じてサービスの質を高める施策をとっています。
「コストと人数」が「質」よりも優先されることは想像に難くありません。
アルバイト経験を通じて「教化」される学生たち
アメリカでは50年代半ばに大手企業が社員に対して盛んに「教化」を行いました。新入社員を社会から孤立させ、理解させたいメッセージで取り囲むことによって「
組織社会化」を強烈に推進していたのです。
手法自体はその後洗練され、個性や創造性にも重きを置いた「教育」へと進化しましたが、メッセージで取り囲んで社会化を促すことは現在でも盛んに行われています。
そして、学生はアルバイト教育においてかつて「教化」と呼ばれたアプローチの現代版に遭遇することになったのです。
良質なプラクティス
先進的な企業では、組織文化への取り込みにおいて、帰属(居場所化)、感化(心的受容)、フィードバック(浸透)、報酬(達成)を、高いレベルでの職務を実現させる目的でデザインし成果を出しています。
さらにはゲーミフィケーションのアプローチで、課題と解決のツールを同時に与え、課題解決時のステージアップや、他者(他店)と競わせることで自発性を誘発させながら、仕事に巻き込む一方で、仕事の動機とやりがいと快楽をもたらしていると分析できます。
これらの良質なプラクティスに対し、逆に「ブラックバイト」と呼ばれる悪質なプラクティスも存在しますが、今回、トランシジョンへの影響で考えたいのは良質なプラクティスに関してです。
盲従するシンパ
良質なプラクティスは、企業とアルバイトでWin-Winの関係性ですから、アルバイトのロイヤリティを高め、場合によってはその企業ブランドへ心酔したり、プライドを醸成し絆化が深く進むことも珍しくありません。
一方、企業は社員に対していかなるビジネスモデルでも通用する資質や思考を求める傾向が強いと思います。過度なシンパが社員になることへの否定的意見をよく聞きます。
トランシジョンへの影響
否定的になる理由は、先鋭化し視野が狭窄することへの課題意識でしょう。
現状否定も含め、より本質的な課題を自ら定義し、周囲を巻き込みながら解決するという、今日重要視されるビジネスパーソン像と過度な企業ブランドのシンパは対照的に映ります。
もう少し分かり易く言うと、採用面接の際にアルバイト経験とそのアルバイトへの愛着を熱く語る学生に対して、「そんなに好きならその会社に就職すれば良いのに・・・」と感じざるをえない一方、なぜその会社では面接が進まなかったのだろうか、という疑問からたどり答えです。
複雑で多様な経験が重要なのは、本質への気づきが異なる世界のギャップから得られるものであるからとも言えます。
学生の向き合い方
そこでトランジションを迎える学生に必要なことは、非アルバイトも含め複数の良質なプラクティスを経験することであると考えられます。たとえ良質であっても唯一のプラクティスに埋没せず、何度も越境するべきなのでしょう。
企業の向き合い方
良質なプラクティスで学生アルバイトを戦力化するだけでなく、職業意識醸成への働きかけが出来ると良いのかもしれません。