朝ドラ「舞い上がれ」を観ていたら飛行訓練の前に182項目にわたる点検手順プロシジャーを描くシーンがあった、
僕は飛行機を飛ばせないから実際は知らないけど、似たような乗車前点検手順で言えば、自動車や自動二輪の免許取得の際の教習で実施していたことが思い出される後方から車が来ないことの確認とかね。実際の運転でも手順が抜けた時にたいがい何かが起こるものだよね。
残念ながら退職されてしまったけど、デイケアで一時送迎の運転手をされていた職員さんは前職が鉄道会社勤務ということで、運転中に指差しによる安全確認を必ず行われていた。
一度身についた手順は簡単には消えないのでしょう。
こうした手順は僕たちのスキルが上達する過程でマクロ化(自動化)され並列化され、作業場率を上げていく、
身体が覚えるというやつだ、
脳卒中で脳の運動野を破壊されてしまった僕は、ゼロから歩行などを学び直している。
まずは筋力が弱くなりしかも思うように動かせなくなった左脚をカバーして転倒を防ぐために杖をつかっての歩行だ。
右手に杖を持ってまず杖を前について次に左脚を前に振りだし、最後に身体を支える右脚を前に振りだす、1-2-3のリズムで、常に3点で身体を保持するのが基本になる。三脚と同じ原理である
この歩き方確かに身体は安定するのだけど普通の歩行に比べて手順が多い分、歩くのが遅くなる。
リハビリでは、杖を使い歩けるようになればこんどはより長い時間、よりは速く歩くことが目標になる。
それは健常な人が普通に歩くように歩けるということなのだ。
速く歩くためには1-2-3のリズムではなく1-2のほうが有利だ、これを2ピッチと呼ぶのだけど杖を前に突くのと左脚を振りだすのを並列化しなくてはならない、これが1になる。
しかし1の時、身体は右脚一本で保持されることになるから身体は不安定になるから無意識のうちに右足一本で安定して立位がとれるよう上体の姿勢などで体のバランスを調整する必要があってこれがマクロ化だ。右足を振りだすときは不自由な左脚と杖で身体を支えるのだからこれも不安定だ。
またバランスが崩れたときに立て直す動きを取らなくてはならないこれも自動的に出来ないと転倒リスクが高まる。リハビリの歩行訓練はまさにマクロ化、並列化のによる歩行スキル上達のプロセスなのである。が実態は不安定さとの闘いだ。
目標は無意識に速く長く安全に歩けるようになること、それは脳出血前のぼくには思いもつかなかったような目標であり今僕の目の前にぶら下がっている。それはそれできっと僕の人生にとって意味ある目標なのだろう。
脳卒中で、ひたすら増えていたお酒も一切飲まなくなったし血圧も平均で130/90オーバーだったのが今では110/80アンダーになった。
リハビリを通じて指導してもらっている若い理学療法士さんたちにはたくさんの気づきをもらっているし、生きることの意味も都度考えることが増えた。
それらはかつての僕には薄かったものだ、新しい世界は古い世界の問題や悩みを解き明かすヒントが溢れていて
相変わらず動かない左手をさすりながらも、新しい世界も古い世界もさらに開かれていくように感じられている。
普通に2ピッチ歩行が出来るようになった頃僕はきっと次の新たな目標に向けて歩行スキルを磨くのだろう、なんとなくこの鍛錬には終わりが無いことにも感づいている。
でもきっと人生ってそういうものだよね常に新たなページを開こうとあがきでも、自らを弁えて無理なことはあきらめて我慢する、
そうこうして気がつくと、人生初の長期入院ももう一年前の彼方の出来事になっているこの先の人生、また何が待っているかわからないけど、一喜一憂せずに今現在自分の身体と僕を支えてくれているあらゆるものへの感謝だけは忘れないようにしたいと願っているのである。