2026年9月7日月曜日

教師の信念が人を成長させる

認知科学の立場から「創発」を研究する私にとって、学習という認知的変化は本質的に創発的な現象である。関係性の醸成やリソースの開発によって、「複雑さ」という創発の前提条件をデザインすることは可能だ。しかし、実際に立ち現れる創発そのものは「意図不在」かつ「還元不能」であり、要するに結果がどうなるかは事前には分からないと考えている

しかし教師は、教育という介入によってあえて「複雑さ」を与えることで、成長を促すことができるという強い信念を持っている。ここでの「成長」とは、時系列で見れば状況への適応が連続的に向上するポジティブフィードバックの連鎖が、自己組織的に持続する状態であり、いかなる困難に直面しても長期的な適応性(持続的適応)を持って対処可能になった状態であると考えられる。

実は、誰もが日常的に「短期的適応」を行っており、それはある一瞬のスナップショット(ミニマルセルフの即時的な選び)に過ぎない。その短期的適応の連続が「道つなぎ」となり、一つのナラティブを構成していくのだが、この短期的適応から「持続的適応」へと行為選好が変わることこそ、人は「成長」と見なすのかもしれない

未知の世界を恐れず勇気を持って一歩を踏み出すこと(アクティブ)。誰とでも気持ちや力を合わせること(コラボ)。「どうあるべきか」という視点から自己を節制・抑制し、整えること(エシカル)。そして本気で思考し、事実の前提を疑いながら物事の本質を探究すること(インサイト)。誰もが、このような「よりよく生きるための余白」である倫理空間を自在に活用しながら生きている。そして、次の瞬間やその先の未来に待ち受ける「まだ見ぬ困難」という自然の摂理においても、人はこの倫理空間を自在に泳いでいくことができる――。そうした「人間という存在とその可能性への信頼」こそが、教師の持つ信念の正体なのかもしれない

6MoNで実現する創発のデザインとは、ミニマルセルフの倫理空間の可視化と、その連鎖であるナラティブの可視化による「倫理空間のリソース化」、そして対話を通じた関係性の醸成である。暗闇の中で懐中電灯を照らし、絵巻物を少しずつ広げていくように、非評価の場において自身の立ち位置(選び方)を映し出すこと。しかし、単なる「創発(結果の不確定性)」にとどまらず「成長(持続的適応への確信)」という観点に立てば、教師の信念が導く役割はこの上なく大きい。

自己組織化の理論に則れば、教師の信念というマクロな秩序が、倫理空間を泳ぐというミクロな秩序を巻き込み、「成長」の方向へと創発させているということなのだろう