「新卒一括採用の終焉?──富士通の決断が示す未来」
新卒一括採用は、戦後の人材不足に端を発する**「青田買い」と、それに対する企業の倫理協定**の中で形作られてきた。
この制度は、日本独自の新卒採用システムとして長年機能し、学生から社会人へのトランジション(移行)の通過儀礼の役割を担ってきた。しかし、終身雇用が崩壊し、労働市場が流動化する中で、通年採用やジョブ型採用の一般化が進んでいる。
今回の富士通の新卒一括採用撤廃の発表は、こうした変化が新卒採用の在り方にも及んだことを象徴する出来事だ。
では、この変化の背景には何があるのか?
AIの普及と「能力」という虚構の崩壊
企業にとって、**「生産性を高める能力の調達」**は経営の生命線だった。
しかし、AIの登場によって、これまで「人間の能力」として捉えられていたものが、必ずしも人に担保されなくてもよい時代になりつつある。
つまり、
✔ これまで「人材の能力」が企業の生産性を決定していた
✔ しかし、AIの普及により「能力」という概念そのものが揺らぎつつある
この変化は、企業の採用戦略に大きな影響を与えることは間違いない。
「いい学生」とは何か?──採用活動のミッシングリンク
これまでの採用活動は、「能力の見極め」と「能力を有する人材の惹きつけ(志望動機形成)」を同時に行うものだった。
しかし、パフォーマンスの発揮は文脈依存性が高いため、「本当にいい学生かどうか」は入社後にならないと分からない。
かつて、あるエクセレントカンパニーの採用を支援した際、採用責任者から次のような問いが投げかけられた。
「本当にいい学生が採れているのか?」
この問いに対する答えはシンプルだ。
「いい学生かどうかは、入社後のパフォーマンスを見なければ分からない」
つまり、企業が求める「いい学生」とは、経営戦略上必要な能力を発揮できるポテンシャルを持つ人材であり、これは採用時点では完全に測ることができないのだ。
この**「ポテンシャルとパフォーマンスのミッシングリンク」**こそが、新卒一括採用が抱える最大の矛盾であり、今回の富士通の決断の一因となった可能性が高い。
今後の採用はどう変わるのか?
富士通の決定は、日本の採用市場にとって大きな転換点となる可能性がある。
✅ 通年採用の加速 → 「新卒だから」「4月入社だから」という縛りがなくなる
✅ ジョブ型採用の普及 → 企業が求めるスキルと、候補者の持つスキルのマッチングが重視される
✅ AI活用による選考の高度化 → 人の「能力」に頼らず、データドリブンな採用が進む
今後、企業は**「能力」よりも「適応力」「学習力」「価値観の一致」**といった要素を重視するようになり、就活の在り方も変わっていくだろう。
結論:「能力の調達」から「適応力の確保」へ
✔ 新卒一括採用は、戦後の人材不足と企業の倫理協定の中で生まれたが、労働市場の流動化とともに変容している
✔ AIの普及により、「生産性を担保する能力の調達」という概念そのものが変わりつつある
✔ 企業が求める「いい学生」とは、入社後のパフォーマンス次第であり、採用時点での見極めには限界がある
✔ 富士通の決断は、こうした「ポテンシャルとパフォーマンスのミッシングリンク」に対する対応策の一つと考えられる
「採用=能力の調達」から、「採用=適応力の確保」へ──。
これが、今後の企業採用の大きな潮流となるのではないだろうか。
