人的資本の開示義務化に合わせて社員のモチベーションやエンゲージメントのサーベイが企業で広がっている。
これらのサーベイの結果は数値で出され現場マネージャーはとにかく数字を上げるように経営から言われている。
要するにサーベイの結果はマネージャーのマネージメント能力の優劣をひいては経営能力の優劣を表象しているとアブダクションされているのである。
しかしながらこの論には大きな誤謬がある。
AIやロボットの進化において極めて大きな働きをしている認知科学の指摘から考えよう
アブダクション から 生まれ た「 能力」 概念
「 力」 は 個体 の 中( 体内、 脳 内) に 備わっ て いる と 見なさ れ て いる。「力」 が 生み出す もう 一つ の 潜在的 な 意味 は 差別 性、 つまり それ には 程度、 強弱 の 差 が ある という もの だ。力 を 測り、 序列化 する ため の テスト が 行わ れる わけ だ。
鈴木宏昭. 私たちはどう学んでいるのか ――創発から見る認知の変化 (ちくまプリマー新書) (pp.16-17). 筑摩書房. Kindle 版.
そのうえで同書は「力」の文脈依存性に触れている。
しかし社員の内発動機は極めて個人文脈に依存したパーソナルなものであってマネージャーや経営者とは元来無関係なものである。
「能力」と言う、こうしたアブダクションによるメタファー的理解の弊害は、やれ「学力」だ「非認知能力」だ「偏差値」だと振り回されている学生のみならず産業組織の組織構成員にも深く影を落としているのだ。
さてAIの発展に大きく寄与した認知科学の知見を活かすということはAIの時代に人がサバイブする知恵であることは疑いない。
