2025年9月5日金曜日

あなたの会社は「意味」のマネジメントをしていますか

 

希望を失うとき、人は去る

――フランクル『夜と霧』に学ぶ新入社員の早期離職

絶滅収容所が教える「意味」の力

精神科医ヴィクトール・フランクルは、ナチスの強制収容所での極限体験を『夜と霧』に書き残しました。そこで彼が目の当たりにしたのは、体力のある人間が必ずしも生き残るわけではないという事実でした。むしろ「なぜ生きるのか」という未来への意味を失った人から順に、精神的に崩壊し、やがて命を落としていったのです。
一方で、家族への愛や未完の仕事、使命感など、自分を超えた目標を持ち続けた人間は、状況に屈せずに生き延びました。フランクルはこれを「人間には状況を選べなくても、その状況への態度を選ぶ自由が残されている」と表現しました。

早期離職する新入社員の姿

この洞察は、今日の企業が直面する「新入社員の早期離職」の問題に驚くほど重なります。
入社後すぐに会社を去る人の多くは、短期的な期待に依存しています。リアリティショックと呼ばれるものである
「理想の上司に出会えるはずだ」「数年で昇進できるはずだ」といった見込みが裏切られると、一気に希望を失い、仕事そのものに意味を見いだせなくなってしまうのです。これはフランクルが描いた「クリスマスまでに解放されると信じ、叶わずに死んでいった囚人」の姿に似ています。

定着する人材の共通点

逆に、困難を受け止めて成長していく新入社員には共通点があります。
彼らは「なぜこの会社で働くのか」を自分の言葉で語れます。
「この経験を将来のキャリアにつなげたい」「ここで学んだことを社会に還元したい」といった未来の物語を描き、短期的な環境の揺らぎに左右されにくいのです。
彼らはまた、与えられた環境に対して「どう向き合うか」を主体的に選び取ります。困難を「理不尽」と切り捨てるのではなく、「自分を鍛える試練」として意味づける。この柔軟な態度の自由こそが、適応力の核心です。

組織ができること

では、企業は何をすべきでしょうか。
第一に、入社初期に「働く意味」を言語化させる仕組み が必要です。配属ガイダンスや1on1で「なぜここで働きたいのか」「どんな未来を描いているのか」を語らせることは、彼らにとって精神的な支えとなります。
第二に、困難に対する態度を選ぶ自由を意識化させる ことです。困難をただのストレスではなく学習の機会として捉えるようリフレーミングを促すことが、レジリエンスを高めます。
第三に、希望喪失のサインを早期に察知する仕組み を整えることです。未来を語らなくなったり、自分の物語を語らなくなった新入社員は要注意です。

意味のマネジメントへ

フランクルが収容所で見出した真実は、現代のビジネスにそのまま響きます。
人は「なぜ働くのか」を見失ったときに去り、未来への意味を描けるときに踏みとどまります。
企業が若手を定着させたいなら、待遇や制度だけでなく、一人ひとりの「意味」を育てるマネジメント に取り組む必要があるのです。