2023年1月13日金曜日

僕達の日常は縮約した結果じゃない。僕たち自身に関する知の仮説と統計の限界

 私たちには他者から認識可能な一貫性がある。英語で言うとPersonality Traits Consistancyということになる観察可能なモノは科学の対象である、人は科学の対象となりうるのだ、ではそういった観察可能な人の一貫性はどうやってもたらされるのかというと、実は諸説紛々だが、大きくは5つの説が研究されている生まれ持った遺伝的個性(Genetic Factor)と育成環境(The result of living in a stable environment)から基本的パーソナリティ(Personality Traits Consistancy)を培い、培われたパーソナリティが新たな経験を生み(Goodness of fit、Person-environment transactions)、経験に向き合う態度から向き不向き得手不得手を感じながら目標や目的の達成を得て(Experiential learning)、達成によって基本的パーソナリティを動的に上書きし更新し(A sense of achieved or consolidated identity)一貫性が育っていくのだ。例えばモチベーションは6割が遺伝的要因だと研究されているし、でも人の個性や気質と呼ばれる特徴の全てを説明できるわけじゃない。

そこで環境とか経験とか様々な研究がされているのだけど、人の個性以上に環境や経験には多様性と固有性があって全てを観察記述することは絶対に不可能だゆえに、故に人のパーソナリティがいかに生まれるのかを単一理論化することは出来ない。人の意識(反応)や行動(適応的選択的)は極めて状況依存性が高いから再現性とか実証とか出来ない、心理学では実験として条件を制御して人の心理の再現性などを研究するけど、実際の生活場面でそのような実験的条件統制はありえないから現実的じゃない。そこで現実に即した臨床という立場が生まれずっと対峙し合っているのが現状である。この実験と臨床の対峙は人に関わる科学において永遠の命題なのかもしれない。そういった状況の中で出てきたのが情報科学における人工知能や人工生命の研究だ。人の営みを科学的に再現しようという取り組みの中で、認知、意識、思考の理解が必須となっているのだけど、まだまだ夢の途中である。この多様性固有性文脈依存性のなかにある生命をいかに記述し研究するのか、情報革命の中で客観的なビッグデータの解析を通じて研究を行う機械学習などが進化する一方でその方法では、意識や思考といった人間の本質を解明することは出来ないこともわかってきており。本質解明の一助に成ると考えられているのが一人称研究である。一人称研究とは暗黙的なスキルを探究し,顕在化させようとする方法の一つに,諏訪の提唱する一人称研究[2]がある. 一人称研究とは,「あるひとが現場で出合ったものご とを,個別具体的状況を捨て置かずに,一人称視点 で観察・記述し,そのデータをもとに知の姿につい ての新しい仮説を立てようとする」研究手法である. 近年,人の有する知にまつわる研究は,客観的な立 場から何らかの実験・観察・分析を行い普遍的/再現 可能な論を導出しようとする近代科学的なアプロー チによって行われることが多い.僕は個性の一貫性に関する知の仮説はこの個別具体的状況を捨て置かない一人称研究以外にあり得ないと考えている。客観的データの統計解析は言い換えれば個別的具体的状況の縮約だからね。でも前述したように、多様性固有性文脈依存性のなかに僕たちの人生はあるわけで。僕たちは個別的具体的状況の表象である存在なのだ、

人生は一本道じゃない