2013年5月3日金曜日

温故知新、温新知故な世界 破壊的イノベーションと懐古風イノベーション

最近、チェキの売れ行きが好調だそうです。チェキとは、富士フイルムが製造、販売するインスタントカメラです。
ところで、インスタントカメラを生み出したポラロイド社は、デジタルカメラ全盛の変化についていけず、倒産してしまいました。これは、破壊的イノベーションの実例ですが、今更ながらのチェキの好調の要因は、韓国、中国でのヒットが大きいようです。

これまでも、古いことが価値になる商品が多数ありました。LPレコードやジーンズ、古くは骨董家具など、すでに廃版となっていて、実用+趣味的な要素を強く持っている傾向がありました。今回のチェキのヒットは、在庫品ではなく、今、まさに生産している商品であるところに注目です。
というのも、デジタルカメラもすでに市場が飽和し価格もすごく下がっているなかで、異例の売れ行きとなっているからです。

ちょっと、趣味的な話になるのですが、デジタルカメラには、レンズが交換できる種類のものがあります。そのなかで特に、光学ファインダーを持たないタイプでかつレンズが交換できる種類のカメラが登場したとき、フイルム時代の古いレンズ交換式カメラのレンズも使えることがわかりました。古いレンズと新しいデジタルカメラを繋ぐマウントアダプタという部品を使って行うのですが、それによって、古いレンズの値段が一斉に上がり、活発に取引きされ使われています。

破壊的イノベーションでそれまでの商品の価値が無くなったと考えるのはどうも短絡的であるようです。

もちろん、全ての商品がそうではありませんが、「趣味の世界」「細々と」といった認識を改める必要があります。それを「懐古風イノベーション」と呼んでみます。

この「懐古風イノベーション」を支えるのは、グローバル化、高齢化、そして若年層堅実化の流れです。

先ほどのチェキもそうですが、マーケットがグローバルになった瞬間にビジネスとして成立します。
次に、先進国だけでなく中国でも、高齢化が進んでいますので、高齢者が若かりしとき憧れた商品が売れます。楽器や大型オートバイなどがこの例です。
最後の若年層堅実化ですが、生まれたときからイノベーションを消費してきた世代は、消費行動自体をイノベート(刷新)しています。新しいものを消費するのではなく自分にとっての必要性、こだわりを軸にした「新しさを消費」するのです。チェキにもこの要素があると思います。先日参加したラーニングイベントでは、登壇者は投影資料を毛筆で書き、それをスキャナーで読み込んで作ったそうです。一方、毛筆とかスキャナーは古いものですが、「新しさ」がそこにありました。昔のテイストを上手く使う手法は、ファッションビジネスでは常套手段ですね。

まとめると、懐古風イノベーションとは、「グローバルマーケットに向け、高齢者にかつて支持されたものを「新しさ」の意味づけを行って送り出すこと」となります。

「新しい」とは時間の問題、「新しさ」とは感性の問題ですし、コンテキストが大切になりますから、破壊的イノベーションの担い手が事業家や研究開発者であるのに対して、懐古風イノベーションの担い手はキュレーターなのだと思います。
そして、「懐古風イノベーション」とは「こころの時代」のイノベーションの在り方を示しているのかもしれません。


高層マンションより、昭和風の中華料理店に「新しさ」を感じる?