2013年12月27日金曜日

ホスピタリズムと精神的空虚の議論を通じて

本を通じて「ホスピタリズム」という現象を知りました。それは、ごく初期の発達段階における精神的空虚が引き起こす衝撃的なものです。

ホスピタリズムは別名、「施設病」と呼ばれ、親から話され孤児院や養護院などの施設で育った子供に、精神発達、身体発達の遅れとさらには生存率の低下が確認できる現象です。

精神科医ルネ・スピッツが研究し、1945年に「ホスピタリズム」という論文を発表しています。論文の要旨が動画で公開されています。

スピッツは、一般的な家庭の子供、犯罪で刑務所に出産前に収監され母子更生施設で暮らす子供、そして戦争などで親がいなく孤児院でくらす子供と3つのグループを調査したところ、孤児院で暮らす子供は調査対象の3分の1が2歳までに死亡していること、生存した子供にも発達障害が多く認めらることを明らかにしたのです。

現在、どのような議論がなされているのか分かりませんが2つの点で印象に残りました。

ひとつは厳しい現実から知る母子関係の大切さです。

人間は生まれると最初に母親と社会的関係を持ちます。そして、その関係を通じて社会性が芽生えます。乳児にとってそのごく初期の社会性の芽生えが、母親との関係の欠損による精神的空虚で阻害され、その後の社会性の発達に大きな影響を与えることは想像に難くないのですが、生存自体に影響を与えることまでは思いが及びませんでした。

もうひとつは数字で示すことの意味です。

明確なグルーピングと定量的な実証研究の結果として、数字で示される事実は「気づき」を越えて解決されなければならない問題を提起します。数字は自ら文脈を作り出すのでなく、文脈を強化する重要な役割です。「生存が難し」というより「3分の1が生存できない」と伝えられたほうが事を重大に受け止めます。ひとつの認知バイアスでもあるのですが、文脈は、数字を使って事実を的確に伝えることが大切です。


そして、「ホスピタリズム」を知ることで改めて気づいたのは、精神的空虚が、身体にとってもかなり影響を与えること(おそらく成人にとっても)と、提示された問題を解決する際に、「孤児院の子供を救う」という目前の状況改善と「孤児を生む戦争を無くす」というそもそもの根本課題の解決と両面を考えなくてはいけないことでした。


社会性と身体