「小乗(しょうじょう)」と「大乗(だいじょう)」は、もともと仏教(特にインド仏教の発展過程)に由来する宗教用語です。
モデル内では、この宗教的・哲学的な意味合いを「視点のスケール(ミクロとマクロ)」に置き換えて応用していますが、本来の仏教における意味は以下の通りです。
仏教における本来の意味
小乗(上座部仏教・初期仏教の側からの自称ではない歴史的呼称)
本来の意味: 「小さな乗り物(乗り物=教え)」。
概念: 個人の解脱(悟りを開くこと)や修道、自己の迷いを取り除くことを第一の目的とする教え。
大乗(大乗仏教)
本来の意味: 「大きな乗り物」。
概念: 自ら悟りを開くだけでなく、生きとし生けるすべての衆生(他者)を救済し、ともに悟りの世界(より良い世界)を目指すことを本義とする教え。
本モデルにおける比喩的な応用
6MoNの行為選好モデルでは、この仏教の原義を比喩として取り入れ、以下のように対象とする視点や価値観の広がりとして定義し直しています。
小乗: 「私」「目の前」「個の幸せ」に焦点を当てるミクロな視点
大乗: 「他者」「社会」「全体の幸せ」に焦点を当てるマクロな視点
古典的な哲学・宗教の概念を「人間の意識や行動の向きを表す軸」として借用している形です。
「知(ち)」と「行(こう/ぎょう)」も、哲学や宗教、学術において長い歴史を持つ概念です。
1. 思想・哲学における背景
陽明学の「知行合一(ちこうごういつ)」
本来の意味: 中国の明代の思想家・王陽明が唱えた概念。「知ること(認識)」と「行うこと(実践)」は本来一体であり、真に知ることは必ず行動を伴う、あるいは実践を通して初めて本当の知識になるという教えです。
仏教における「知」と「行」
「知(智)」: 慈悲や悟りに通じる正しい認識や洞察力。
「行」: 実際に身・口・意(身体・言葉・心)で重ねる実践や修行のこと。
2. 本モデルにおけるアプローチの定義
6MoNの行為選好モデルでは、この伝統的な概念を「意思決定とアプローチの様式」として整理しています。
知(思考・見立てる・探求する)
定義: 状況を観察し、思考を深め、本質や構造を見定める内省的・認識的なアプローチ。
交差する象限:
賢慮(インサイト): 個の視点で問いを深め、探求・分析する。
節制(エシカル): 全体・社会の視点で規範を守り、調整・継承する。
行(動く・試す・関わる)
定義: 外部に対して自発的に働きかけ、試行錯誤や対話を通じて具体的に変化を起こす実践的・アウトプット的なアプローチ。
交差する象限:
勇気(アクティブ): 自発的に即行動し、先頭に立って推進する。
正義(コラボ): 他者を巻き込み、対話しながら協働して新たな価値を作る。
- 「小乗・大乗」がどこを目指すか(視点のスケール)を表すのに対し、「知・行」はどのように向かうか(アプローチの向き)を表す軸として機能しています。
