噺家に見る人材育成というテーマで、落語家、立川晴の輔師匠と公認会計士、田中靖浩さんが巧妙な掛け合いから立川流の人材育成話(噺?)を聞くことができました。
例えば入門。就活のようにエントリーシートも面談も、そもそも募集もありません。
真打に弟子入りすることしかないのですが、どうやって入門できるか全くルールはないそうです。そこで、晴の輔師匠は必死で考え、4年間独演会に行き、自宅を探しあて、自宅の前で土下座したそうです。
落語立川流の教え・名言集として挙げられていた「そこらへんにいろ」は、まさに入門を許された直後に言われた言葉で、そうは言われても、と、師匠のそばにいると「うっとおしい」と言われ、じゃあ、と、近くにいないと「お前はなんのためにいるんだ」と言われる。
また、「俺が飲みたい時にお茶をだせ」(つまり、じっと見ていなければならない)、それが出来るようになってくると「俺が飲みたい量で出せ」と、それを含めて「そこらへんて、どこらへん?」というぐらい、常に指示は抽象的だそうです。
そういった抽象的な指示も想像力を高め失敗を繰り返すと不思議とわかるようになってくるし、プライドを捨てて(「風になれ」)給与もないひどい(と思えるような)仕打ちの生活を続けていると、失敗を挽回しようとする姿の面白さを伝える落語の本質や、江戸時代の貧乏さが骨身で経験できるので、7年後には骨が太くなり、それがお金になるようになるといった話は、意図して行なっているのであれば、まさに人材育成のための「育成計画・研修計画作り」ではない経験から学ぶための「経験のデザイン」であるように思えます。
落語の熱演と合わせ、これ以外にも軽妙な語り口で、企業における人材育成とは異次元の世界をたっぷり堪能させて頂きましたが、席のレイアウトに厳しく拘る一面も持ち合わせるなど、晴の輔師匠の「自分が心底惚れて選んだ師匠と落語の話」と「とても冷静、客観的に物事を見ている」対照的な姿が話の端々で強く印象に残りました。
熱い思いと冷静な覚悟。
この振り子が人も芸も成長させるのではないでしょうか。
サービスタイム
